日程:1976.3.6(土)〜7(日)
参加者:NABE、K田
コース:新宿→(辰野)→駒ヶ根→(バス)→しらび平→(ロープウェイ)→千畳敷カール→(登山・滑降)→千畳敷山荘(泊)、カールでスキー→逆コースで帰京
1976.3.6(土)ド快晴
山の観光開発が進むと、機械力でできるだけ高いところまで行って大滑降することが可能な場所を探すようになった。中央アルプス・千畳敷カールから麓のしらび平まで滑ったという記録を、研究室の後輩・K田君がどこかで読んで来て、標高差950mは魅力だから、挑戦してみようということになった。地図ではロープウェイの北側の尾根を滑れば良いように見える。通常我々の山スキーは、冬山は怖いから、天候が落ち着く春以降に行く。しかし中央アルプスでは時期が遅いと麓まで雪なんか無いだろうから、敢えて冬場に行くことにした。
K田君と2人で06:50新宿発、こまがね1号で10:53駒ヶ根着。ここは「赤穂」というのが元の名前。駒ヶ岳ロープウェイ乗り場行きの連絡バスで、一般車輌乗り入れ禁止のものすごいカーブの山道を45分で駆け登る。カーブするとバスの最前部は空中にはみ出してスリル満点なのだが、一番前左の特等席を占領している登山客は、何と寝てるじゃないか。同行のK田君が「寝るなら代わって下さい」と言ったか言わなかったか覚えていないが、不服そう、小生も不服。こんな景色でよく寝るよ、全く。しらび平からロープウェイで千畳敷へ。どピーカンという表現が当時あったが、まさにそれで、山頂駅からカールへ出ると、眩しくて目が開けられない。標高2600mまで急に登ったためか、2人ともひどい頭痛に襲われた。
駒ヶ岳登山者は宝剣岳に向かって右の峠へ向かうが、我々は左の鞍部目指して登ることにした。峠(極楽平のへり)に着くと、トランシーバーを持った人がいる。単独行の20才男性登山者の転落死体が今日発見され、捜索隊が明日10人ほど入るんだそうで、山の斜面にザック・帽子・頭の皮・遺体、の順に発見されたなどという生々しい話を聞かされた。峠からは御嶽山・乗鞍岳がよく見える。東に目を転ずれば、南アルプスと富士山が一望。
さて下る。登りではあまり感じなかったが、見下ろすとひどく急な斜面で、山荘が目の下に見える。残雪期の雪質だったら何ということはない斜度なのだが、クラストしているから、正直怖いぐらい。斜滑降すると凍った斜面に薄く張り付いた新雪が剥がれてカラカラと落ちていく。えいやっとジャンプターンをすれば出来そうだが、着地で失敗したらそのまま千畳敷山荘まで行ってしまいそう。何だか怖くて腰が引けてしまい、思い切って空中に体を投出すことが出来ない。ずるすると斜滑降したら、斜面が捩れているから、斜面の端の方はだんだん鉛直になってくる。まさしく立ったまま手が斜面に触れる。こういう斜面は針ノ木雪渓の上でも経験したが、(繰り返すようだが)残雪期だったら怖くない。止まったままではジャンプターンも出来ず、おそるおそるキックターンをするが、腰が引けているからスキーが180度になった状態で動けなくなったのは恐怖。何とか下山したが、こんなスキーは初めてだ。
当時の日記には16時から翌朝7時まで熟睡したとあるが、夕食は食べた筈。泊は千畳敷山荘ホテル(02658-3-3107)。狭い部屋だったが快適だった。
1976.3.7(日)曇・強風
頭痛は癒ってきたが、昨日の快晴無風から一転して強風。まだガスは降りてこないが、天気は明らかに下り坂。雪渓途中の草付きの下部(斜面がひどく急になる手前)まで登って一滑りするが、こんな緩い斜度だったら雪質が少々悪くても快調。しかしもう一度峠まで登り返す気力はもうないし、本来の目的であるしらび平までの大滑降は(調査不足のせいもあったが)実現しなかったのだから、スキーはもう良いから帰ろう。
宿の人に聞いてみたら、今年は例年の1/3の積雪で、下まで滑れるほど雪が降るのは(無論、例年では)もっとずっと後の時期だが、薮が濃密で、以前に下った人がいたが、もう死ぬほど辛かったそうで、絶対に勧めないとのこと。たしかに、地図の植生記号だけでは薮の様子は分からないが、ロープウェイから見ても、あの濃密な薮が雪で滑りやすい斜面に変身するとはとうてい思えない。結局、千畳敷カールからの大滑降の夢は消えた。
11時のロープウェイで下山したら、下界は良い天気だった。バスに乗り継ぎ、伊奈号(急行?、快速?)で上諏訪、あずさ18号に乗換えて17時すぎには新宿。こんなに近いんだったら、木曽駒山頂往復スキーで新宿から日帰りも可能だろう。しかし、やはり2900mの冬山は厳しかった。
早く帰ったので、千駄ヶ谷のプールへ飛び込みをやりに行った。今日は調子が良かった。O嬢というやや肉付きの良いお嬢さんが、何でも有名ホテルの娘らしいが、飛び込みをやってて、お節介な奴が小生に彼女を紹介しようとしたが、そのお節介野郎が自己紹介もせず不躾な態度で話し掛けたものだから、彼女も変な顔をしてる。当時独身だった小生としては、大事なチャンスを逸したのかもしれない。
●費用:貸しストック代200円という領収書がある。大型リングを付けた長目の山用ストックを持って行って、締った雪では無用の「長物」(まさに)だから、普通のを借りたのだろうか、記憶がない。
交通費メモ:駒ヶ根→都区内の運賃1280円、上諏訪→新宿の自由席特急券800円。
ロープウェイの半券には値段が書いてない。